信玄の用兵法 ~大将の功名とは~ |
合戦に強かったとしても、他の二つの能力がなければ、勝利の成果も一斉無になってしまう。というよりも、先の二つこそが対象にはむしろ必要不可欠なのであって、この二つがあれば合戦にも簡単に負けないであろうし、そもそも合戦に追い込まれることも減るのではないか。
大合戦に勝利を得たのち、負けた大将の国内に攻め入り、味方に従わぬ侍たちを征服するのだが、敵国内の城を囲んでせめても、合戦に敗れた大将は救援の軍を差し向けることができないから、籠城の侍たちは結局開城して降参し、臣従するか、または切腹するか、二つに一つとなる。こうしてその城は、大合戦に勝った大将の手に入るのである。 しかし、大合戦で勝利を得る以前に敵の城が落ちたことによって勢い込むのは、敵の策略に陥るものである。国境付近の城を攻めるのは、敵の援軍を引き出して大合戦を遂げるのが目的である。 それは、例えば武芸者が人を斬るのに敵をだましたり、出し抜いたりすることを少しもしないならば、敵は何をとばかりにかかってくるのと同じ道理である。 合戦以上に大切な事 さて、国境付近の城主の侍を倒したならば、大合戦に敗れた大将の本拠へと侵攻し、戦いに勝利するのが名誉であるが、その後の内政が悪ければ国はたちまち乱れてしまう。ゆえに「戦いに勝つは易く、勝ちを守るは難し」というのである。 しかし、国内をよく治めることは大将一人でできることではないから、優れた人材を選び出すことが肝要である。それであるから、人材の評価を正しく行うことを、大将の第一の名誉、手柄というのである。 |