信玄の用兵法
 ~軍法とは何か~
 


 趣旨
一対一の勝負から始まって、野戦、攻城などの集団戦闘に習熟し、さらには敵国の内部攪乱の術までも身につけるのが真の軍法である。その根本は、適切な指揮であり、適切な指揮は、部下をよく組織することによって行うことができるとしている。
 要約
そもそも軍法とは闘争の道である。まず合戦のないとき、武士が一対一で戦うことを斬り合い、仕合という。こうした闘争において確実に勝つよう修練を積み、十分に熟練して、数多くの闘争を重ね、勝利を得て、自らの名声をあげ、人にも教える者を、優れた兵法者と呼ぶのである。
  どのような敵かを見極める
また、領国を持っておられる大将が、自国他国を争奪し、野戦、攻城などの闘争を行うことを軍陣と呼ぶ。この軍陣において、
弱敵、小敵、大敵、強敵、打倒すべき敵、服従させるべき敵など、様々な敵に対応して、武略、知略、計略を巧みに使い、必ず見事な勝利を得ることを、優れた軍法という。
  武略の基本
自国の中の城を正しく構え、陣を正しく張り、部隊を正しく編成することが中心となる。
  優れた知略
① 優れた大将がいて、奇襲戦法をとる敵には正攻法で対応する
② 良い大将がおらずに奇襲をしようとする敵には、こちらも奇襲戦法をとる
③ 良い大将がいて正攻法で来る敵に対しては、味方は奇策をとるように見せて、実際は正攻法を取り、敵を乱れに引き込む。
④ 良い大将がおらずに正攻法で来る敵に対しては威力をもってこれを圧倒する。

敵を挑発してその反応を調べ、敵の行軍の途中を攻撃し、伏兵を使って殺し、降伏させ、また敵の中に内応する侍を作り、また味方の中の謀略にすぐれた勇士を選んで敵国に差し向け、敵の作戦を聞き取って敵を完全に滅ぼすなどというのが、知略の基本である。
  優れた計略
知恵の優れた出家、町人、百姓などに日頃から恩を与えておき、敵国に派遣して、敵の大将が無能で、道楽にふけり、民衆の不満を買っていることを聞き出して、敵国を動揺させておいてから、その国を攻める。また敵の中の邪欲の強いものを聞き出し、贈物などの手段によって味方につけ、その国を従える。こうしたことが計略の基本である。

以上の武略、知略、計略の三つのやり方について十分に知り、これを実行して勝利を得る行為をさして、すぐれた軍法という。
このすぐれた軍法の源は何かと言えば、
大将の指揮が適格だということである。そして的確な指揮は、正しい制度によって行われる。




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