東京の川と地形
 下町低地の川


現在、東京下町低地を流れる主な川を紹介する。下町低地を流れる川は、洪水などの自然的理由で、たびたび流路が変わったことに加えて、それぞれの川の名が河川行政上の理由から、本来の自然河川の名や、放水路などの人工水路につけられた名称が何回も変えられている。
① 隅田川 
武蔵台地にそって曲流して東京の中心部を流れている川。この隅田川が本来の荒川であった。
② 荒川
隅田川の北から東側にかけて流れる。この川は隅田川の洪水防止用に掘られた放水路である。初めは荒川放水路と呼ばれたが、現在では荒川となり、隅田川は荒川下流の支流として扱われる。
③ 中川
堀切付近から荒川放水路と平行して、ほぼ同時に掘られたものである。この放水路の目的は、埼玉平野から流れてくる古利根川と葛西用水の下流に当たる古隅田川と綾瀬川が、JR綾瀬駅付近で合流して、隅田川に流れ込んでいたのを断ち切って、直接東京湾に流すために掘られた。途中で旧中川と合流する。
④ 旧中川
古利根川の下流部の名である。旧中川は、蛇行して流れていたが、中川・荒川両方水路で分断された。
⑤ 新中川
青砥付近から今井まで、ほぼ一直線に掘られた④の古利根川と旧中川の放水路で、⑦の旧江戸川に注ぐ。
⑥ 江戸川
下町低地のもっとも東、下総台地に沿って流れる川。明治時代までは利根川とも呼ばれた。⑦の旧江戸川が本来の江戸川であったが、篠崎から千葉県市川市に江戸川放水路が掘られ、それが現在の江戸川本流になった。
⑦ 旧江戸川
⑥の江戸川放水路の完成により、自然河川の旧江戸川は、⑤の新中川の排水路的な役割に変わった。

現在の東京下町低地の幹線河川は、①,②、③、⑥、⑦の5本の川である。放水路とは人工の水路を意味する用語である。東京下町の河川の多くが、自然河川の改修が重ねられて、人工水路が自然河川の名を称するようになったことがわかる。
さらに隅田川と荒川の間には、北十間川・竪川・小名木川・仙台堀川・二十間川・十間川・大島川・洲崎川などの東京都心部から放射状に掘られた運河、および大横川・横十間川・砂町川など、いわば道路で言えば環状線状に掘られた運河が縦横に通じていた。
また、東京湾の埋め立ての進行とともに、埋立地の間に埋め残しの部分、つまり水路ができ、その水路にも適当な川の名が次々につけられている。
このように「広義の利根川」河口部は、自然の川と運河が入り組んで非常に多様な水系を形成している。




TOPページへ BACKします