2・選挙 選挙制度 |
比例代表制 |
選挙には当然ながらルールがある。どうやって当選者を決めるのか?日本の衆議院総選挙では、選挙区から1名の議員を選出する。その選挙区から選ぶ議員の数(定数)が1名と最小なので、これを小選挙区制という。逆に2名以上は大選挙区である。とはいっても、3人とかだと多い気がしないためか、1993年まで衆議院総選挙で採用していた3~5人区を日本では中選挙区と呼んでいた。 現行制度に話を戻すと、当選者は票の多い人である。多い順に選ぶので、選び方としては多数代表制という。それと同時に、今の衆議院総選挙では、ブロックごとに政党を選んで投票をしている。こちらは、各党の得票に応じて議席を比例配分するので、比例代表制である。日本のように、小選挙区の多数代表制と比例代表制を両方独立に用いる制度のことを「並立制」という。日本の衆議院では1994年以降採用しているが、同じころから世界でも採用する国々が出ている。これに対し、ドイツやニュージーランドのように、基本的に比例代表制を取っていて、一部の当選者を決めるためだけにしょうせんきょくを用いる国もあり、こちらは併用制という。 |
多数代表制の問題点 |
多数代表制を採っている国は、イギリスやアメリカ、カナダ、インドなどがある。国政レベルでは通常、小選挙区で行われる。当選の要件は、基本的に相対的に最も多くの票を取ることである。これらの国々の選挙制度は小選挙区相対多数代表制と呼ばれる。これに対し、過半数の支持を得ることを求めている国もあり、こちらを絶対多数代表制という。フランスやオーストラリアである。総選挙区多数代表制では、得票の多い候補がその選挙区の議席を独占する。50%少しの票があれば議席を独り占めできる。これが全国レベルで集計されれば、与野党で相殺しあうとはいえ、勝った側は得票よりもずっと多い割合で議席を確保することが多い。有権者から見ても、与党がきちんと統治をしたか評価しやすい。他方、与党に議席が過剰に与えられているということは、それだけ、どこかで議席に結び付かずに無駄になっている票(死票)が非常に多いということになる。民意を反映させるべきという観点からすれば批判が生じる可能性が高い。またほかにも、小選挙区を用いるので当選のハードルが上がり、新人が参入しにくくなったり、細かく線引きするので党派など一部のグループに有利になるような恣意的な線引き(ゲリマンダー)が行われたりする可能性がある等、弊害が指摘されている。 さらに相対多数代表制では、コンドルセのパラドクスという深刻な理論的問題がある。ABC3人の有権者が3つの選択肢から1つを採用しようとするとき、それぞれの選択肢がAがa→b→c、Bがb→c→a、Cさんがc→a→bの順に好むと、1回戦をAvsBとするか、BvsCとするか、CvsAとするかで答えが違ってくる。決定が順番に依存してしまっているのだ。言い換えると決定が循環に陥ってできないのだ。 |
比例代表制の多様性 |
比例代表制を採用している国は世界では多い。比例代表制は1920年代のヨーロッパで普及し、世界に広まった。その背後には、第一次世界大戦後の民族自決の考え方や、この頃に拡大した選挙権(普通選挙制度の導入)が影響しているといわれている。比例代表制といっても、実際にはいくつかの方法がある。日本では衆参共にドント式を採用しているが、世界にはサングラ式やヘアー式と呼ばれる方法を用いている国々も多くある。一般にドント式は大政党に有利とされているのに対し、サングラ式などは中小政党に優しいとされる。比例代表は票と議席を比例させることが目的であるが、このように複数のやり方が存在しているのは、まず票と議席が比例している状態とはどんなものかということについて複数の定義があり、それに従って設計された方法も複数あるためである。ここに現実的な配慮が加わるので、そのバリエーションは非常に多く考えられる。さらにいうと、票を集計したり、あるいは議席を配分したりするレベル(県・州単位か、全国レベルか)や配分を何段階でするのか、あるいは、誰を当選させるかに関して政党が決めるのか、有権者に決めさせるのかなどの観点からもカスタマイズできるので、一口に比例代表制といっても、その方法は無数にある。どんな比例代表制にするのか、これもまたその国の有権者の選考次第である。 |