1・政治とマスメディア
メディアの役割 

    マスメディアとは
ニュースを奉じるマスメディアのその役割と実態を考えてみたい。
現代社会においてマスメディアに期待されている役割とは何か?国会、政党、政治家、官庁は自ら情報を発表しているので、それを人々が自分自身で収集すれば済むのではないかと思うかもしれない。とりわけ、インターネットが発達し普及した現代においては、一般有権者もそのような情報にアクセスすることが容易になった。国会での過去の答弁や官庁の議事録などもインターネットで簡単に入手できる。
しかし、私たちがいちいち政治について日々調べることは忙しい毎日の中で現実的ではない。そのかわりにマスメディアが政治について日々、情報をまとめて提供してくれることで私たちは政治や社会の動きを追うことができる。さらに、マスメディアはこのような「情報伝達装置」としての役割だけでなく、権力の監視という役割も果たしている。(2020年時点ではこれも怪しいが)情報発信を国会や政党、政治家、官庁に全て委ねたとしても、それぞれの政治アクターは自分たちに都合のよいことばかり話し、都合の悪いことを隠して発表しない可能性もある。そうすると、一般の有権者は制限された情報で政治について判断したり、ときには選挙での投票先を決めたりすることになる。
権力の監視という役割のために、マスメディアは専門的知識を有し、訓練を受けた取材記者を抱えている。記者たちの日常的な報道を通じて、問題があればそれを明らかにしていくということが期待されている。これは、一般の有権者ができるだけ正確で公平な情報を得たうえで政治的な意見を形成し、投票先を考えるための基礎的な条件ともいえる。
    第四の権力 
このような権力監視機能をもとに他の権力に対峙することから、マスメディアは第四の権力とも呼ばれる。この表現は、立法・行政・司法の三権に対してそれを監視するという機能を果たすマスメディアが、それと同時に、それ自身も大きな権力を有しているということも意味している。現代社会で起きている数多くの出来事について、その一つ一つすべてをマスメディアが報じるわけではない。マスメディアは「ニュースバリュー(ニュースの価値)」に従って、どの情報を報じ、どの情報を報じないかを決定する。このような情報のゲートキーパー(門番)としての役割は、何を以てニュースバリューとするか、どのような基準で取捨選択をするかという点で議論の的になる。情報の取捨選択は、一般の有権者が何を知るか(何を知らないままにするか)を決めるため、マスメディア自体の力も政治過程においては無視することができなくなるのである。



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