米軍基地の世界的ネットワークの形成 ~戦後の基地構想完成~ |
9月27日統合参謀計画部から戦後基地計画についての報告書が提出された。ここでは、アメリカが必要とする軍事基地及び基地権限のリストも作られ、それらの基地は、最重要基地地区、第二重要基地地区、補助的基地地区、副次的基地地区の四段階に区分されている。 日本関係では、「日本から切り離される、すべての日本の委任統治領ならびに中部太平洋諸島(小笠原ならびに琉球を含む)は、でいれば完全な主権を保有することによって、さもなければ戦略地域として指定された信託統治協定を通じて、利用し得る」という条件が付けられている。ただしこの箇所はJC7770/40では修正された。 この時点において陸軍参謀長ジョージ・マーシャル将軍は、「平時に外国領にアメリカの人員と施設を維持するにあたっての政治的複雑さと困難さを考慮し、国務省は、いくつかの地域において、一つまたはその他の形式で金を支払う見返りに、要求される施設を維持する負担を他国が受け入れるような協定を真剣に検討すべきである」とコメントしていた。既に平時において基地を確保する困難さを予見していた。
この中で確保すべき基地をJCS570/34と同様に四つのレベルに分けている。アジア太平洋地域ではハワイと並んで、フィリピン、マリアナ諸島、琉球などが最重要基地とされ、小笠原や中部太平洋のいくつかの島々が第二重要基地としてリストアップされている。 沖縄についていえば、JCS570/34では、琉球は第二重要基地群に入れられていたが、陸軍航空隊や海軍の要求により最重要基地に格上げされた。ただマリアナなど旧日本委任統治領と琉球をどのような形で確保するのかという問題は残されており、JCS570/40ではマリアナや琉球については「米国の排他的な戦略的支配のもとに置かれるだろう」という抽象的な言い方にとどまった。 いずれにせよ、アメリカの安全保障のためにフィリピン、マリアナ、琉球を確保し、基地を建設する必要性は強く認識されていた。これは太平洋方面でのアメリカ本土防衛ラインを太平洋の西側に敷こうというもので、日本の真珠湾攻撃など太平洋戦争の経験から学んだ教訓であった。 他方、大西洋方面では、アイスランド、グリーンランドからニューファンドランド、アゾレス、バミューダ、キューバ、プエルトリコ、さらには他のカリブ海諸地域など、大西洋にグッと張り出した防衛ラインを構築しようとしていた。
核兵器の開発により、空軍基地と空母主体の海軍を重視し、敵の近くで作戦を展開するために、前進基地の重要性が認識されるようになった。統合参謀本部は「十分な基地の重要性―特に前方地域での―は新しい兵器の出現によって高められた。防衛において敵を遠ざけたままにし、攻勢においては新しい兵器などを持って一層敵の近くで我々の作戦を行うのである」と述べている。 アメリカ本土を防衛するために、防衛ラインを前方に広げて敵を遠ざけ、敵の近くで戦うという考え方がアメリカの安全保障政策の基本となった。そのことは敵の近くに存在する同盟国を戦場にすることになり、この事は米軍基地と受入国との間で大きな問題となるのだ。 |